病院実習報告−関わりの中で−
実習期間 平成11年7月5日〜9月13日
実習機関 千葉大学医学部附属病院
961176 野口奈美
1,実習目標と課題
今回の実習では、患者さんと接し患者さんの精神状態を理解するよう心掛けることを目標とした。実習課題としては外来グループ療法において、@プログラムを通じて患者さんの症状を把握し、問題点を知る。また患者さんの生活や考え方を理解し尊重する。A先生の患者さんへの関わり方から患者さんに接する際の心構えを学ぶ。B表情・言動・プログラムに対する姿勢等の変化に注目し、メンバー同士のコミュニケーションを長期的にみる。また心理検査において@検査法を学び、解釈の仕方を勉強する。また検査結果の報告・活用の仕方を学ぶ。Aカウンセラーのクライエントへの関わり方を学ぶ。
2,実習内容の概要
@心理検査の同席
午前中に心理検査が入っていた4日間、HTP・ロールシャッハテスト・SPECT−セットの検査場面に同席させて頂き、主に患者さんへの関わり方を学んだ。
A外来グループ療法への参加
午後は外来グループ療法のプログラムに参加させて頂いた。企画者のメンバーさんを中心にディスカッションやスポーツ、また毎年恒例のデイキャンプも行われた。メンバーさんを理解することと同時に、グループの意味や在り方についても学んだ。
3,ケーススタディ
外来グループは20代前半から30代前半の青年期の方々で構成されている。今回は、今年6月末から外来に参加し始めたばかりの方に焦点をあててみた。
*なお、対象者のレポートは実習時に課題として出され、グループ開始時のアンケートの結果(POMS・QOL・日常生活行動評価尺度など)の解釈等をまとめ、提出したものを補足しつつ再度検討した。
a)対象者:24歳 男性
b)診断名:schizophrenia
c)グループ参加依頼:現在は幻覚・妄想等は消失し、感情表現も豊かで引きこもりもないが、社会復帰へのあせりが強く無理をしがちなので、デイケア段階で慣らしていくことを目的としグループ参加の申し込みをされる。
d)検査の方法:グループ参加事前にPOMS・QOL・日常生活行動評価尺度・社会生活技能・自己表現・対人関係の悩み・自己評価・充実感尺度・対人関係についての質問を実施。また担当医師によるBPRS記入も実施。
e)検査結果および活動状況
・検査結果によると、対人関係にはさほど不安や悩みは抱えておらず、親しい友人もおり、活発に余暇活動もしている様子である。日常生活もたいてい自分で出来ていると感じていると思われる。精神医学的にも症状は軽く、グループアセスメントを見ても生活技能や自己表現、充実感など他メンバーさんと比較し得点が高い。向上心もあり自分自身の可能性もしっかり見ているが、考えすぎてため込んだり、他者の顔色をうかがってしまうような面もあると思われる。
・グループへの参加状況は、ディスカッション・映画鑑賞・散歩と続けて参加していたが、本人企画のカラオケに欠席して以来不参加が続いた。この時期からアルバイトを始めた。8月下旬のデイキャンプに参加し、その後また欠席が続く。この間も外来通院・アルバイトは続いている。グループ参加時は穏やかで話しやすく、他メンバーさんとも自然に接することが出来ているように見えた。
f)問題意識と考察
対象者は大学卒業後就職するが人間関係のストレスで発症、任意入院となった。通院後再就職するが再発。社会復帰へのあせりが強く、無理をして疲れてしまう傾向がある。対象者自身の企画に欠席して以来の不参加が心配であったが、それがアルバイトが重なってしまった為なのか、もしくは欠席したことで参加しづらくなっていたのか、参加した際にもふれずにいたので不明である。もともと考えすぎてため込んでしまう傾向があるので、自分の気持ちを遠回しにでも言うことが出来るようになると良いと思われる。
グループ参加時には笑顔で他メンバーさんの話を聞き、自分からも話しかけるなど上手にコミュニケーションを図っているので、今後はグループ内での行動や出来事を通じて自分が言いにくいことを言ったり、言い訳などが出来るようサポートしていくことが大切だと思われる。またアルバイトも自分の自信につながる良い機会ではあるが、無理をせず、疲れや不安・不満をためず、何よりあせらないようにすることが大切である。
4,全体的考察
今回の実習では本当に多くのことを学ばせて頂いたと思う。
心理検査場面ではカウンセラーとしての患者さんへの配慮・患者さんの言動に対する考察と対応の柔軟さに毎回驚かされ、患者さんの精神状態をしっかり見つめ、理解し対応していくことの大切さを肌で感じた。しかし患者さんとの関わり方にばかり注目してしまい、検査結果を自分なりに考察することを怠ってしまったので反省している。外来グループ療法では、実際にメンバーさんと接し、グループへの姿勢や日常生活の話などを聞くことができ、各メンバーさんがグループに上手に参加していると感じた。そういった、無理をせず自然な状態で参加できるようなグループの雰囲気を根本で支え、見守るというスタッフの役割も学ぶことが出来た。またグループ内の様々な出来事の中で互いに刺激を受けつつ、各々の課題が見つかり、あせらず少しずつ進んでいく場というグループの意味も考えさせられた。そして全体を通して、『色々な視点から見ること』の大切さを何度となく感じた。一つの視点にとらわれず色々な角度から物事を考え、色々な角度から人の言動を考察し何が必要か、何が大切か、何を意味しているのかしっかり見つめている事が大切だと学んだ。
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