患者さんに対するスタッフの関わり方について
 
実習期間 平成11年7月28日〜9月22日
実習機関 医療法人 静和会 浅井病院
学生証番号 961535 佐野坂 亮子
 
1. 実習目的
@病院で行われるデイケア・SSTのプログラムがどのように行われ、メンバーの方の心理的な援助や社会復帰のために、どのように役立てられているのかということについて考える。
A心理検査がどのように行われているのかを知ると共に、検査の施行法や解釈の仕方について学ぶ。
 
2. 実習内容の概要
@病棟における患者さんとのかかわり
急性期病棟・慢性期病棟で、入院されている患者さんに接した。
Aデイケアへの参加
生活支援の場であるデイケアAでは運動プログラムや軽作業、Aに比べて、より個別的な配慮が必要なデイケアBではお菓子作りのプログラムに参加させていただいた。
BSSTへの参加
病棟の患者さんやデイケアの方で構成されるSSTに参加させていただいた。
C心理検査への陪席
精神分裂病(妄想型)で入院されている男性の患者さんのWAIS−Rとロールシャッハ・テストに陪席させていただいた。
 
3. 実習課題とその達成状況
@病棟における患者さんとのかかわり:急性期・慢性期病棟の、それぞれの病棟で患者さんと接して話をする中で、患者さんの病気のことや、生活していく上で病気のために困っていること等を聞くことができた。入院されている患者さんの多くが、金銭面や高齢の親の面倒が見られないこと等、家族に対する負担を気にかけていらっしゃった。また、特に慢性期病棟の患者さんは、患者さん自身が高齢である場合が多く、必ずしも入院を必要としてはいないが、退院する場所がないために入院を続けられているという方もいらっしゃった。
Aデイケアへの参加:デイケアAではメンバーの方が積極的にプログラムに参加されていた。運動では、経験者の方が初心者の方に丁寧に教えている様子や、メンバー同士がお互いに声を掛け合って楽しい雰囲気でプログラムを行っている様子を見ることができた。デイケアBでは、料理が得意な方を中心にして、買出しや準備等、メンバーの方が協力してお菓子を作っていた。デイケアAに比べて対人的な刺激に弱いメンバーで構成されるグループで、作業の途中でメンバーの方が急にいなくなってしまうということもあった。そのために、メンバー一人一人の様子を観察しながら、全員で作業ができるようにプログラムを進めることがスタッフに求められていると知ることができた。また、デイケアでは様々な個性の人が一緒にプログラムに参加するため、メンバーの方々の人間関係に配慮し、続けて参加できるような場を作ることも重要であるということを学んだ。メンバーの方の様子を定期的に観察することは、病気の再発防止につながる重要なことだからである。
BSSTへの参加:浅井病院のSSTは、独自の進め方で行われるものだったので、始めのうちは流れがわかりにくいところもあったが、途中からは、SSTの輪の中に入っていくことができたのではないかと思う。メンバーの方の長期目標といったものはなく、毎回、メンバーの方の短期目標を中心としてプログラムが進められていた。そのために例えば、社会復帰などという大きな目標を持ってプログラムに参加するということはないが、何かちょっとした問題でつまずいてしまった時に、そこで動けなくなってしまうのではなく、親身になって悩みを聞いてくれる仲間がいると感じられるだけでも、メンバーの方にとっては大きな支えになるということを学んだ。そして、他のメンバーの方が親身になって考えられるような雰囲気を作るのも、スタッフにとって重要な役割だということを知ることができた。
C心理検査への陪席:実際に病院で行われている心理検査に陪席させていただいて、検査への導入や進め方など、ただ本に書かれている通りに行うのではなく、被検者の様子に注意して、時には検査以外の話も含めながら、緊張しないで普段の能力が出せるように検査を進めることが重要であると感じた。また、ロールシャッハ・テストのスコアリングや解釈をさせていただいて、ロールシャッハ・テストを知らない人が読んでも理解できるような報告書を作ることが基本であり、とても大切なことであることを知った。ただ特徴を並べるだけでなく、被検者の最も大きな特徴を中心として、検査中の様子やカルテから読み取れることもふまえて書かれている先生の報告書を見せていただくことができ、学ぶところの大きい実習となった。
 
4. 未達成の課題
 患者さんに病名を言われた時など、精神病についての勉強が足りないと感じる場面があった。また、患者さんとの距離のとり方について、先に実習に行かれた方から話は聞いていたが、実際に患者さんと接して、例えば妄想の話などをどこまで聞いて、どの程度否定したらいいのかということの判断が難しく、消極的になってしまうことが多かった。あらかじめ対応の仕方について心がけておく必要があると感じた。
 
5. 全体的考察
 8回という短い期間で、多くの経験をさせていただき、得るところの大きい実習となった。実習で一番に感じたことは、デイケア、SSTのプログラムや心理検査に対するスタッフの関わり方についてだった。デイケアでの、落ち着くことができて続けて参加しようと感じられるような場作り、SSTでの、自分の悩みに対して親身に考えてくれると思えるような雰囲気作り、また「心理検査」という場面で、被検者の緊張をほぐしてよい結果を引き出せるような場作りはとても印象的だった。
 また、はじめは患者さんが初対面の私とは話ができないのではないかという不安があったが、患者さんの方が私に気を遣って色々と話し掛けてくださったので、こちらが何かをするという姿勢だけでなく、向こうからの働きかけを受けるという姿勢も学ぶことができたのではないかと思う。


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