病院実習報告−患者の観察を中心に−
 
実習期間 平成11年5月19日〜6月30日
実習機関 鳳生会 成田病院
961323 菅 寛子
 
1.実習目標
@病棟やデイケアにて直接患者と接することで、その患者の行動の原因や変化について観察し、考えてみる。また関わりのなかで、自分自身の役割を見つけていく。
A精神科における心理査定として主に使用されている、片口式ロールシャッハテストの指導を受ける。そこで治療としての活用について学習し、更に自分自身のデータを使って解釈法を理解する。
 
2.実習内容の概要
@病棟患者との関わり
a)開放病棟・閉鎖病棟・保護室の見学
b)病棟レク(カラオケ)の参加
c)作業療法(ワープロ)の見学
d)バス旅行での観察
Aデイケアのメンバーとの関わり
a)デイケアのプログラム(カラオケ・卓球・散歩・ワープロ)の参加
b)家族会の見学
B医療スタッフとのかかわり
a)相談室スタッフ:臨床心理士・作業療法士・PSW
b)医療スタッフ:看護婦・医師・薬剤師
Cロールシャッハ・テストについて
a)施行(患者1名・スタッフ1名)
b)講義・解釈(スタッフと自分自身のデーター)
 
3.実習課題とその達成状況
@病棟患者との関わりについて:病棟内の様子とあわせて外出時の様子も観察することができ、いくつかの視点から患者一人一人の見立てを自分なりに行い、さらにそれを活かしながら関わっていくことができた。
 また、病棟レクや作業療法・遠足の意味を考察した。それぞれに今後改善すべき課題があるが、どれをとっても枠組みの中の自由が原則としてあり、患者個人に合わせたプログラムをもって活動性を向上が目指されていた。さらにはデイケアと比べて社会復帰的な効果はないものの、多くの患者にとって病棟が生活の場になっている現状に伴い、QOLの向上の効果をも含んでいることを学んだ。
Aデイケアのメンバーとの関わりについて:一緒にプログラムに参加するなかで、メンバーの様々な視点からの観察を試みた。そこではそれぞれが自分のペースにあわせて、プログラムに参加していた。このような自由な雰囲気があるものの、全体的な目的としては「社会復帰」があり、ただ仲間と一緒に楽しく過ごす「憩いの場」として終わるのではなく、そのなかで自分の居場所を見つけ、それを土台に社会のなかでメンバーが生きていくための次へのステップとしてデイケアが存在するべきであることを考察した。
 また、家族会の見学では家族の考えや悩みを知ることができた。メンバーの現状をやや否定的にとらえてしまっている家族や、家族内で悩みを抱え込んでしまっている家族などがおり、適切で効果的なサポートの必要性を感じた。
Bロ・テスト指導について:患者への施行を通して、実際の様子から、結果を解釈し治療の一貫用いられるまでの経過を体験し学習することができた。なかでもデータの解釈では、いろんな視点でデータを見て、根拠のある解釈を、相手のプラスになるように伝えていくことが非常に重要であった。
 また、自分自身のデータを解釈することで、自分の理解に新たな視点が生まれ、同時にロ・テストが多くの現場で使用されている根拠を考察した。
 
4.未達成の課題
@特にデイケアのメンバーとの関わりのなかで、どれだけを受け入れて、どこまでを抑えていくべきであるのかが時に分からなくなってしまうことがあった。こちらにやや依存的な対象を求める方や話をする場でないときに一方的に話をしてくる方、少し答えにくい質問をされたときに、どう拒否していくべきであるか。今後はこうしたメンバーとの適切な距離の取り方を考えていきたい。
A患者との関わりにおいて、それぞれの疾病の症状についての知識はある程度学習してあったのだが、薬の副作用は頭に入っていなかった。長期の入院患者と接するときには副作用による症状が目立ち、会話にも頻繁にでてくるもので、患者自身や家族が最も悩んでいることであった。薬局の見学やスタッフの方の話を聞いて少し理解できたが、さらなる知識の習得も必要だろう。
B病院という場においては、その病院の施設や制度についてもある程度理解する必要がある。特に成田病院では最近、老人を対象にした施設が整備されており、病院の心理職としてはこうした知識も習得して、病院内の全ての対象者に援助ができるように心がけなくてはならない。
 
5.全体的考察
 本実習を通して、短い期間ではあったが多くの人と出会い、話をして多くのことを学んだ。患者やメンバーについてはそれぞれ一通りの見立てが立てられたと思う。もちろんこれらは、その人の一部でしかないので、更に違った視点からの観察をし、理解を深めたい。 全体的にのんびりとした実習であったが、そのなかで、その時に自分のできることとできないことをじっくり考えながら行動できた。「のんびりと」の中でも自分自身に入ってくることが大きすぎて途中で戸惑うこともあったが、見るもの全てに疑問をもち、考えていくことの困難さと同時に大切さを知ることができた。ここでの体験を今後に活かしていこうと思う。


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