心理臨床的な検査の見方とその後
 
実習期間 平成11年5月13日〜7月1日
実習機関 千葉県千葉リハビリテーションセンター
961538 高橋 さち子
 
1.実習目標
 千葉県が設置している千葉リハビリテーションセンターがどのような医療施設であるかを知るとともに、臨床心理士による心理臨床的なかかわり方を体験的に学習する。
 また、心理検査やカウンセリングが現場でどのように行われているのかを見学することによって、心理業務の内容がどのように行われ、それがどのような役割を果たしているのかを学ぶことを目標とした。
 具体的な達成課題としては、母子カウンセリングや発達評価などの際に子どもや親のどこを見ているのか、どのような見通しをもってどのように話を進めているのかを学ぶ。
 現場でしか体験できない生の声を聞き、大学で学んでいることをどのように役立てれば良いのか、また自分に何が足りないのかを理解し、今後の学習に役立てる。
 保育や社会福祉の知識、実習経験を生かし、子供たちや患者さんなどに接していく中で、できることに積極的に参加し、実習を通して何かを身に付ける。
 
2.実習内容の概要
@発達評価
 主に新版K式発達検査を用いて子どもの発達評価に同席させていただいた。検査終了後、両親(母親)と先生が話しているときには、子どもと遊ばせていただいた。
A成人高次脳機能評価
 患者さんにWAIS‐RやBGテスト、高次脳機能テスト、ルリアの神経心理テストを実施したり、自律訓練を行う場に同席させていただいた。また、病棟での集団カウンセリングも見学させていただいた。
B母親集団カウンセリング
 母子入院されている母親を集めての集団カウンセリングに同席させていただいた。
C重症心身障害児施設 陽育園
 陽育園へ行き、子どもと接したり、食事介助をさせていただき、発達検査を行う場にも同席させていただいた。
D銚子市立わかば学園
 心理発達指導に連れていっていただき、病院外での臨床心理士の役割についても学ばせていただいた。
 
3.実習課題とその達成状況
 千葉リハビリテーションセンターでは心理発達科は訓練治療部の1つであり、他の病院のように精神科や神経内科の下に位置されていない。そのため、心理的な治療、または見解を必要とするさまざまな科の医師が自由に依頼できるようになっていて機能的である。
 新版K式による発達検査では、回を重ねるごとに、検査の進み方と内容を理解し、先生が患者さんのどこを見ているのか、今何を調べているのかが少しずつではあるがわかるようになってきた。検査の中で子どもたちと接したり、一緒に遊んだりしたことはとても楽しかったし、子どもをいろいろな角度から観察するために保育実習の経験はとても役に立ったと思う。
 また、病院外での臨床心理士の役割が発達評価の内容から個別指導を行うだけではなく、保育士との連携によってその子に合った指導方法やプログラムを考えて行くことなのだと理解することができた。
 今回の実習を通して最も実感したことは、発達検査や知能検査が1人の人間を理解するための単なる道具・手がかりにすぎず、現状を知ることによってこれからの見通しや援助の手段を決める基礎になるものである、ということであった。私自身、心理の仕事は検査に重点をおいていると考えていたところがあったので、検査結果よりも患者さんがこれからより良く生きていくための援助(リハビリ)が大切なのだと実感した。
 
4.未達成の課題
 神経心理学的、医学的な知識不足を実感させられた。その日同席させていただいた患者さんの病名や脳の損傷部位などについて調べると、納得させられることが多かった。
 後半は、患者さんの様子を見てどのような障害なのかをある程度予想することができるようになったものの、初めは脳の図を思い浮かべることさえできなかった。
 今後は、こうした知識を少しずつ蓄えていくとともに、検査者としての経験を積み、自己理解をすすめていきたい。その上で、集めたたくさんの情報から患者さんを広く理解し、今1番必要なのはどんな援助なのかということを念頭に置きながら今後の見通しをたて、サポートしていけるように努めたいと思う。
 
5.全体的考察
 全体的に、とても内容の濃い実習をさせていただけたのではないかと思う。
 現場で使われている発達検査、知能検査の様子を見学し、その後で実際に得点化したり、レポートにまとめてみたりと「今後、自分だったらどのような見通しをたてて、サポートしていくのか」ということを考えさせていただき、その上で先生の報告書を見せていただいて自分のレポートと比較するなどとても勉強になった。
 また、患者さんのどこを観察するのか、どのような点に注意して見ていけばいいのかを具体的に示していただけたことで、先生が患者さんの何を調べているのか、どこを見ているのかが次第にわかるようになった。そのため、検査者の視点から見たり、患者さんやその家族の視点から見たりと様々な立場から検査の様子を観察することができたと思う。
 実習中、実習生としてどう行動すればいいのか迷うことが何度かあったが、自分を信じて動いてみたことでプラスになったのではないかと思う。
 先生方には、忙しい時間をさいて私たちが納得するまで説明していただけたことにとても感謝している。


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