レイモンド・チャンドラー 『大いなる眠り』
双葉十三郎 訳  東京創元社
THE BIG SLEEP, by Raymond Chandler

事件の展開

私立探偵フィリップ・マーローは、大金持ちのスターンウッド老将軍に呼ばれる。
将軍の二人の娘のうちの妹のほうカーメンが、ガイガーという男から賭博の借金の返済を迫られているのだ。
マーローは姉娘ヴィヴィアンから、行方不明になっている元の夫ラスティ・リーガンを探すように父に頼まれたのかと探りを入れられる。
ガイガーは何者かに自宅で射殺され、さらに隠される。スターンウッド家の運転手も殺される。
賭博場経営者エディ・マースの妻モナがリーガンと駆け落ちしたらしい。
ゆすりを企てたブロディという男も射殺される。
将軍から依頼された件は解決したが、リーガンの行方はまったく不明だ。
モナの行方を教えるといってきたジョーンズがマースの手下ラッシュ・キャニノに殺される。
さてマーローは?

Silver-Wig(銀髪のかつら)

マーローは、賭博場経営者マースの妻モナを郊外の隠れ家に探しに行き、キャニノにつかまって、後ろ手に手錠をかけられてしまう。モナはマーローを逃がしてくれる。
 <その後マーローとモナがキスをするシーン。>
「急ぐことはないさ。これはぜんぶ前から決まっていたことなんだ。秒刻みで細かくリハーサルしたことさ。ラジオ番組みたいに。ぜんぜん急ぐことはない。キスしてくれ、シルヴァーウィグ。
(モナはプラチナブロンドのかつらで黒い髪を隠している。マーローは手錠のまま。)
私の口の下の彼女の顔は氷みたいだった。彼女は両手を上げて、私の頭を抱くと唇に強くキスした。彼女の唇も氷のようだった。」
その後、マーローは自分の自動車に隠しておいた拳銃を取り出し、手錠をかけられたまま、脇腹に拳銃をつけて保持し、雨の中、キャニノを射殺する。

映画 『3つ数えろ』

BIG SLEEP の映画ポスター この小説は、ハンフリー・ボガート(Humphrey Bogart)とローレン・バコール(Lauren Bacall)の共演で映画化されました(左および下の映画ポスター参照)。
邦題は『3つ数えろ』です。監督ハワード・ホークス(Howard Hawks)、1946年製作。
映画は小説とはストーリーが違うようですが、わたしはよくおぼえていません(2度は見ているのになー?!)。
でも上に書いた雨の中の銃撃とキスシーンはおぼえています。

幻想的情景

ハードボイルド探偵小説は、トリックの謎解きだけの推理小説に対して、一種のリアリズムを主張しました。
チャンドラーも自ら、ミステリーのリアリティを主張しています。それにもかかわらずチャンドラーは、くりかえし幻想的な情景を描き出しています。
マーローが招かれたスターンウッド将軍邸の熱帯蘭の温室や、作品の終わりのほうの、廃墟になっている石油採掘所の跡地とか、前に述べたマーローとモナのキスシーンとかは、非現実的な情景として描写されています。


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