精神障害者に有効と感じられている治療的援助について
 
 
実習期間 平成11年5月12日〜6月30日
実習機関 医療法人 静和会 浅井病院
961473 恩賀 梨紗
 
1.実習目標
 精神に病を持つ人たちに有効だと感じられている治療的援助の要素とは何かを探り、自分なりに考察していくことを今回の実習の目標とした。
 
2.実習内容の概要
@ 病棟に入る
 急性期病棟・慢性期病棟に入り運動療法に参加したり患者と談話をした。
A SST参加
 メンバーである患者が相互に問題解決を進めていくグループに参加した。
B デイケア参加
 まだ生活が不安定な患者のためのデイケアA、社会復帰に向けてのリハビリを目的としたデイケアB、さらにデイケア・アルコールにそれぞれ参加した。Aでは、プログラムのひとつである散歩とテニスに参加した。Bに参加した日は、院内テニス大会であった。アルコールでは、メンバーである患者が抱えている問題解決を目的とし、SSTの技法を取り入れたミーティングに同席した。
C心理検査場面陪席
 入院患者にWAIS−R、ロールシャッハテストを実施した検査場面に陪席をした。
 
3.実習課題とその達成状況
 今回、様々な治療的援助は精神に病を持つ患者に、どのように機能し有効と感じているのかについて考察していくことを、実習全体の課題とした。
 幸いにも患者と接する機会が多く、様々な姿を見たり話を聞く事ができた。
 まず、薬についてだが、これは患者にとってとても大きなものだと思う。服薬指導のもとに患者にとっては欠かせないものになっている。実際、「薬のおかげで幻聴が治ったと思う。」と、話す患者もいて、薬を飲むことで病気が治る、または症状が安定するという安心感を持つ人がいるのは事実のようだ。
 次に、デイケアやSST、その他様々なプログラムを、患者は自分なりに選択し活用している。「デイケア参加の為に、外出することができ、みんなに会えるし、それで生活のリズムもできる。」というものから、「SSTで発言したり、自分から行動できるようになってきた。ここを、自立に向けての基礎をつくる場にできたらいいと思う。」という患者がいた。
 さらに、患者同士で集まる場が作られていることにも意味があると思う。互いのことを話し合っていく、デイケア・アルコールやSSTでは、顕著だ。特に、デイケア・アルコールでは同じ体験をしてきた人たちでメンバーが構成されている。どちらも、自分と似たような悩みを持ち、体験をしているひと達がいると知ることで、自分だけではないという安心感を得て、勇気づけられていく。自分のことを話すというのは、容易ではないと思う人もいるだろうが、互いの話を聞き、そこで自分が意見を言い、他のメンバーの問題解決などに「役立った」とき、自信を得ることにもつながっていくのではないかと考える。
 以上のことを考えてみて、やはり、重要視されるべきものが患者と職員の関係だと思う。職員は患者に決して何事も強制することなく、患者の意志にまかせようとしていた。また、患者が話したいことがあるといえば聞き、要望があればそれを取り入れようとする。双方の距離は、近すぎては、依存をしてしまい自立を阻害する事になる。遠すぎては、関わりが持ちにくくなる。この関係が保たれることが、患者にとって回復の過程に大切なことなのではないかと思う。
 このように、様々なことをできるだけ患者の側からみて考えた 。そこから見えてくるものは、患者が良いと思ったものが必ずしも治療効果があるとは言い切れないが、忘れてはいけないものがあるということだった。
 
4. 未達成の課題
 今回、患者の感じている治療的援助の有効性に視点をあててきたが、患者がどのように感じているのかもっと深く知りたいと思った。そこで、逆にどのようなことに疑問を持ったり、行き詰まりを感じているのかを考えていくといいのではないかと思う。そうすることで、全体の課題もさらにはっきりしてくる、と思うからだ。
 
5.全体的考察
 今回の実習の課題は、患者の側から見た治療的援助の有効性ということだったのだが、患者にはそれぞれのニーズがあり、全ての個人にあわせていくことは困難でありながらも、患者の気持ちに答えるかのように,病院側の積極的な取り組みが為されているのを感じた。患者に話を聞くと、「安心できる場所だ」「ここで頑張って次につなげたい。」などと、好意的な言葉が多く出てきた。また、病院全体として、あまり強制をせず自由な雰囲気が見られたのだが、一人一人を尊重していることがよくわかる。さらに、必要とあらば、患者に介入することもある。その職員の関わり方が患者との信頼関係を生み、治療的援助の有効性に大きく影響をしていると考える。
 今回の実習では短期間でいろいろなことを経験することができた。何よりも患者の方々と実際にふれあうことができたことは、私にとって大きかった。どこかで、精神の病というものに思いこみを持っていたことにも気づかされた。この経験は、私にとって財産になることと思う。実習を受け入れてくださった病院の方々に感謝しつつ、これからの自分の経験することに生かせていけたらと思う。


浅井病院U

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