“理解”の姿勢から得たもの
 
実習期間 平成11年5月13日〜7月1日
実習機関 千葉リハビリテーションセンター
961362 大和真希子
 
1,実習目標
@初めての病院での実習を通して、自分にできることは何なのかをよく考え、患者さんの障害にあわせたニーズは何か、少しずつ理解していく。
A脳損傷の患者さんが、どのような障害を抱えているか、病院という機関の中でのリハビリがどう行われているかを知る。
 
2,実習内容の概要
@知能・発達検査の場への同席
 WAIS-R、WISC-R、新版K式の席に同席した。それらの結果が一体、今、何を意味しているのかを考える貴重な時間をいただけたと思う。
A母子カウンセリング
 障害を持ったお子さんをもつお母さんたちが集まり、今の自分の正直な気持ちや悩みなどを他のお母さんや、心理科の先生と一緒に話し合っていく。
B施設実習
 実習第5日目に銚子にあるわかば学園という知的障害児の施設で実習をした。新版K式の同席や、そこの子供たちと一緒に遊んだ。
C集団カウンセリング
 千葉リハの3B病棟という成人の方が脳卒中や脳梗塞などで入院している病棟に行き、障害者手帳の交付に関する話などをした。患者さんから出る質問やちょっとした悩みなどにも丁寧に答える時間もあった。
 
3,実習課題とその達成状況
@脳損傷の患者さんの理解:実習に行く前は、脳に損傷のある患者さんを見たこともなく、もちろん障害の部位についても全くと言っていいほど無知であった。しかし、数々の検査に同席させていただいたり、先生方のお話を聞いていくことで、次第に自分なりに、「この患者さんは左手が麻痺しているから大脳の右半球に障害があるんだな」というふうに考え、そこから、「右半球のどこに損傷があるのだろう、今後どういうふうによくなっていくのだろう」と自分なりの考える視点が定まってきたと感じた。また、検査の結果だけを見るのではなく、常に次のステップを考えて、患者さんが今よりもよくなることを前提とした接し方について、実習中ずっと考えさせられたこともあり、病院の中での心理科の姿勢が、その場限りの関係ではなく、患者さんの今後の人生を考えているものだということを実感できた。
A感情・情動失禁への知識を深める:実習の中で、脳の損傷が人間の情動に大きく影響するということを理解した。WAIS-Rの同席の際、患者さんが「なき」の情動失禁に直面していることを知った。脳の障害と気持ちの面は無関係のような気がしていた自分には、この患者さんとの出会いが本当に貴重なものとなった。情動失禁のためちょっとしたことですぐに泣いてしまうその症状は、一体どのようなメカニズムで起きるのか、その症状を患者さんはどのように受け止めているのかなどに関してもっと学びたいと考え、自分なりの考察を先生に見てもらうこともできた。
B事実を伝えることと希望を持たせることの違い:患者さんへの「これから絶対によくなっていくよ。」という先生の言葉は、単にその患者さんに希望を持たせることではなく、本当によくなる、という見通しが立っているときに事実を伝えているのだということを少しずつだが、理解することができた。単に希望を持たせるためにやみくもに「よくなる」と伝えると、時に患者さんにとってマイナスになることもあるということも知った。言葉ひとつひとつが、患者さんとの信頼関係に大きく影響を及ぼすことを学んだ。
 
4,未達成の課題
 今回の病院実習では、自分の知識の少なさや、「理解してきたつもり」という過信を実感したとき、表面上だけのことを知って満足している自分の甘さに気がついた。WAIS-Rなどの検査に関しての勉強が足りず、自分で実施するところまで至らなかった。
 また、患者さんの障害の理解という課題をあげたが、患者さんの表面上のことだけを見ていくだけでは本当に理解することにはならないことを痛感した。患者さんの言葉を聴き、その言葉はどこからくるのか、どういう意味を持つのかという、もっと深いところまで考えないと理解することはできないし、病院に限らず、どこでも「理解する」ことを軽く考えていては、今後につなげていける信頼関係も築けないのだと思った。
 
5,全体の考察
 実習に臨む際に、まず自分に神経心理学的な知識が本当に少ないということから、基礎の基礎から勉強、と焦っていたことが自分自身でもたいへん印象深い。大脳に関して、1から学んでいき、障害名や症状に関して一通り調べたりしたが、完全な状態で実習に入ったというわけではなかった。不安や戸惑いも大きかったが、千葉リハビリテーションセンターでは、多くの患者さんに出会い、先生方の患者さんに対する姿勢や、患者さんの人生をサポートしていく上でのリハビリとはどういうものなのかを学ぶことができて、本当に最高の実習をさせていただいたと思う。実習の途中で、自分には一体何ができるのだろうかと漠然と考えているとき、自分の視点はどこにあるのかわからなくなったりして戸惑うこともあった。しかし、常にここでは患者さんの側で、表面上ではわからない患者さんが内に抱えている問題や、将来への不安への理解が絶対に必要であることがわかった。簡単に「理解する」と言っても、それはとても難しいのだということも、現場にいて本当に強く実感した。自分の考えを自分の言葉で表現したり考えたりした8日間であったと思う。
 実習の8日間を通して自分が得たものはすごく大きくて、何よりも、自分のことが今までと違う視点でよく見えたことに驚いている。障害を抱えている様々な患者さんに対して1人の人間として、温かくサポートしているその場を共有させていただけたことに心から感謝している。貴重なこの経験を、今後、人とのかかわりの中で生かしていくつもりだ。


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